第63回 藤嶺学園高等学校卒業証書授与式 濱谷海八校長式辞

3月1日、小雨の降る中、体育館において藤嶺学園藤沢高等学校第63期生の卒業証書授与式が厳かに執り行なわれ、151名の卒業生たちが思い出多い藤嶺台から巣立っていきました。

卒業生の皆さん、そして保護者の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

PTAでは学校のお許しを得て、ここに卒業式において濱谷校長先生が卒業生たちに送ったメッセージを掲載いたします。

第63回 藤嶺学園藤沢高等学校卒業証書授与式 濱谷海八校長式辞

これから諸君たちに最後の、校長としての式辞を述べさせてもらいます。

普段は原稿を作らずに、先生の思うままに話をしてまいりました。今日は原稿をしっかりと作って、何回か推敲を重ねて諸君達に最後のメッセージを贈りたいと思います。

時代が移り、社会がどんなに変わっても、自然の営みは変わることがありません。今年もまた遊行寺の白梅、紅梅の馥郁たる香りが漂い、既に本格的な春の到来を告げる”こぶし”の花が咲き始めました。この美しい景色の中、今日ここに、藤嶺台に理事長、PTA会長をはじめ、ご来賓の方々のご臨席を賜り、そしてこの様に大勢の卒業生の保護者、ご家族の方々のご列席を頂く中で、第63回藤嶺学園藤沢高等学校卒業証書授与式を挙行できますことを大変嬉しく、ありがたく思います。

卒業生の保護者の皆様方には、ご子息の藤嶺学園藤沢高等学校のご卒業を心からお祝い申し上げたく存じます。おめでとうございました。そして、高い所からではございますが、今日まで我々が行ってきました逞しく、タフな男子を育成する藤嶺教育に温かいご理解とご協力を頂いたことに対し、この場を借りて厚く感謝を申し上げます。ありがとうございました。

さて、63期生151名の諸君、卒業おめでとう。君達にとって一番待ち遠しかった、そして来てほしくない時が遂にやってきました。遊行寺の“いろは坂”を期待に胸を弾ませて一歩一歩登ってきたあの日から早くも三年、或いは六年ですね。思えば実に長い月日が流れ去りました。そして、本日遂に、巣立つ日を迎えてしまいましたね。

君達はこの三年間、藤嶺藤沢において、日常の授業は勿論、茶道、修養、開港記念マラソン、陸上記録会、学園慰霊祭、講演会、藤嶺祭、修学旅行、海外語学研修等を通して学ぶべきことを学び、鍛えるべきところを鍛え、他の人と一緒になって藤嶺教育が目指している柔軟な発想と旺盛なチャレンジ精神を持つ男としての逞しさをしっかりと身につけたのです。だからこそ忘れてならないのは、今がよければ良い、今が楽しければ良いという利己的な生き方ではない、踏まれても、倒されても夢と志を語り続け、優しさ、おおらかさ、どん底から這い上がる力、いわゆる「心力」、「耐性力」を持ち続けていくことが更に求められていくわけです。こうして成長した君達は藤嶺藤沢を卒業し、今日から新たな道を歩み始めるのです。

君達が駆け抜けなければならない社会はどの様なものなんだ。どの様な状態にあるんだろう。残念ながら手放しで希望溢れるバラ色の社会という訳にはいきません。嘗て高度成長期に飛躍的に成長した日本の経済は「一億総中流」と呼ばれる安定した社会を産み出してきました。しかし、経済のグローバリゼーションに伴いその様子は急激に変わってきました。インターネットに代表されるIT技術の発展によって人や物、お金、サービス、情報等が国境を超えて加速度的に移動し、その結果、狭くなった地球の上にグローバル化と多極化の時代潮流が”うねり”を増し、民族、宗教、言語の違いがこれまでの世界史にないような諍いを繰り広げる厳しい、激しい社会になったのです。これがいわゆる現代社会、グローバル社会なのです。

このようなグローバル化した時代を生き抜き、輝く未来を獲得するための武器は人生への情熱、愛、知性、そして体力。そのためには、まず自己の確立が何よりも必要で、自らを作るために必死になることが大切だ。努力、研鑽を惜しまない本物の力を持つこと、高い志、品格、優しさ、決断力、実行力、これを持ってください。

十九世紀の末から二十世紀の初め、アメリカ合衆国で活躍をしたサミュエル・ウルマン(Samuel Ullman)というユダヤ系ドイツ人の実業家がいました。彼が八十歳の記念 に出版した『八十歳の歳月の高みにて』の書に収められている詩の中に ”YOUTH” 「青春」というのがあります。この詩は経済界の先に立つ人物の間では古くから有名な詩ということです。その一節を君達に送ります。

青春とは人生の一時期のことではなく、心のあり方のことだ。
若くあるためには豊かな創造力、逞しい意志、燃える情熱、臆病な心を退ける勇気が必要であり、安易な心を振り捨てる冒険への希求がなければならない。
人間は歳を重ねた時に老いるのではない。理想を無くした時に初めて老いがやってくる。
歳月は人間の皮膚にシワを刻むが、情熱を失えば心にシワを作る。
悩みや疑い、不安や恐怖、失望、これらのものこそ若さを消滅をさせ、雲ひとつ無い空のような心を台無しにしてしまう元凶である。
六十歳になろうと、十六歳であっても人間は驚きへの憧憬、夜空に輝く星座の煌めきにも似た理想や思想に対する敬愛、何かに挑戦する心、子供のような探究心、人生に対する喜びとそれに対する興味を変わらず胸に抱くことができる。
人間は信念と共に若くあり、疑念と共に老いる。
人間は自信と共に若くあり、恐怖と共に老いる。
人間は希望のある限り若くあり、失望と共に老いるのである。
人間は自然や神仏や他者から美しさや喜び、勇気、気力などを感じることができる限り若いのだ。
感性を失い、心が皮肉に覆われ、嘆きや悲しみに閉ざされる時、
たとえ十六歳であっても人は老いてしまう。
頭を高く上げ、希望をつかまえる限り八十歳であっても人は青春の中にいる。

人間の歴史において努力なしに、汗をかくことなしに生きられるという甘い歴史は過去においても、これからもあろうはずはありません。人生で最も大切な事は成功することではなく、努力をし、汗をかく、これが必要なのです。力強く生き抜いてください。

終りになりましたが、上級学校に合格を果たした諸君、おめでとう。心からお祝い申し上げます。また、頑張ったけど、武運つたなく、入試に失敗した諸君、捲土重来を期して又来る春に向かってベストを尽くしてください。朗報を待っています。

151名の卒業生諸君、二つの道があって、どちらに行こうかと迷ったら、苦労の多い方を選べばまず間違いはない。安易に手に入る幸せよりも、辿り着く幸せにこそ大きな喜びがある。それでは西暦2011年3月1日卒業 藤嶺学園藤沢高等学校63期生、151名の諸君に栄光あれ。

君達の藤嶺藤沢 勇猛精進に期待をし、式辞に致します。

ごきげんよう。

以上