第62回 藤嶺学園高等学校卒業証書授与式 濱谷校長式辞

去る三月一日、第62回 藤嶺学園藤沢高等学校卒業証書授与式 が講堂において執り行われ、百八十三名の卒業生達が藤嶺台を巣立っていきました。卒業生とその保護者の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

授与式に於いて濱谷校長先生は今年も心に残るメッセージを卒業生たちに語ってくださいました。PTAでは学校のお許しを得て、卒業式に参加出来なかった方々とも一緒に濱谷校長先生からのメッセージをご紹介したいと思います。

第六十二回 藤嶺学園高等学校卒業証書授与式 濱谷校長式辞

陽射しがすっかり明るくなり、新しい春の訪れがそこ此処に感じられる今日、ここに多くのご来賓のご臨席を得ましたうえ、多数の保護者各位のご列席を賜り、ここに『藤嶺学園藤沢高等学校 第六十二回卒業証書授与式』が厳粛に、かつ盛大に挙行されますことは誠に喜ばしい事と存じます。卒業生、教職員とともにご臨席を頂きました皆様に心より御礼申し上げます。

六十二期生、百八十三名の諸君、卒業おめでとう。

さて、三年間の高校生活を終えて、今日、この藤嶺台から君達はそれぞれの人生に向かって出発をしていくわけです。三年という時の流れを振り返ったとき、君達の心の中はきっと充実した毎日を送ることができたという清々しい満足感で一杯だろうと思います。

学園で培ったものが十年後、二十年後の時代になっても君達の心の中で生き生きとした命を持ち続け、その人生を支えていくものであって欲しいと私達は願っています。そこで、君達の輝かしい門出にあたり、私が日頃考えている、「 “for”ではなく“with”、“with”よりも“in” 」、このフレーズの一端の話をして餞(はなむけ)のメッセージにしたいと思います。

二つの小舟が大海原にあると思って下さい。その小舟にはそれぞれ人が乗っている。もし何か困ったことが起こったらどうなるか? 一方の小舟に乗る人が相手を助けたいと思って一所懸命手を伸ばしても、所詮は違う船の上だ。なかなか届かない。それどころか波風がたてば船はすぅーっと離れて行ってしまう。

”for”、「あなたのために」という意識はこのように外部から人に接する位置にある。

これ対して ”with”、「共にある」とは同じ船の上にいること。そうすればどんなに離れても船の長さより遠くに離れることはない。常に一緒にいる状態だ。「君のために最善をつくすよ」とどんなに約束をしたとしても、“for”の場合はその距離を埋めることはできない。何の約束もしなくとも“with”の方がずっと温かい存在だ。つまり、「あなたのために」と言い続ける人よりも、「良いも悪いも、いつも私はあなたと一緒よ」という方が信頼できるし、勇気づけられる。

しかし、“with”よりも素晴らしいのが “in”、「一体になる」ことだ。いつも「私が私であり、あなたは私である」という考えです。この人間関係はどんな組織の中でも成立する。「一所懸命この会社のために尽くします」と言っても、なにか不都合なことがあるとすぅーっと離れていくのが”for”であるし、どんなに良い時も悪い時も当事者意識を持っているのが“with”。そして、他者と一心同体になって問題の解決に臨むのが“in”であり、これほど頼もしい存在はない。

私は人を愛する「愛」とはこの“in”の状態であると思っています。「愛」も様々に表現をされています。授業の中で学んだと思います。例えばキリスト教では「愛」を「アガペー」と呼び、「神の愛」を意味しています。そこでは社会的に差別されたり、抑圧されたりする人々への「愛」が強調されている。仏教では「慈悲」と呼ばれ、人間だけでなく、「生きとし生けるものすべてへの愛」が説かれている。儒教では「仁」と呼ばれ、「家族や血縁関係への愛」が基本とされている。ギリシャ思想ではポリスの市民間の友情の情を示す「フィリア(友愛)」が愛を示す言葉になっている。まさに見返りの無い「無償の愛」が人生を豊かにするはずだ。覚えていて欲しい。

最近、自分のことを振り返ってみると、幸せを感じる人生の大切なキーワードが大きく分けて三つあると思っている。それは「愛」と、「努力」と、「勝利」だ。私はいつまでも、ふとした時、この三つ、愛、努力、勝利を感じられる人生でありたいと強く思っている。

君達に頑張る自分に誇りを持ってチャレンジして欲しい。生きるとは自分の生き方にどれだけ酔い切れるかだ。それがあれば、経験したことの無い未知との遭遇の時にも自信が持てるはずだ。初心を忘れること無く、いつまでも理屈なしに夢、感動、興奮が心で感じられる人であり続けよう。

就職試験、専門学校、大学に合格を果たした諸君、おめでとう。心からお祝い申し上げます。また、頑張ったけれども、武運つたなく、入試に失敗した諸君、捲土重来を期してまた来る春に向かってベストを尽くして下さい。期待をしています。

おわりになりましたが、保護者の皆様には、本日ご子息がめでたく卒業されます事、誠におめでとうございます。生徒諸君の在学中は一方ならぬご尽力を賜り、本当にありがとうございました。高い席からではありますが、厚く御礼申し上げます。

百八十三名の卒業生諸君、挫けた時には二つの選択肢しか無い。「そこで諦める」か、もしくは「それをバネにして前に進む」かだ。リスクを伴わないチャンスなど無いからだ。本当に頑張っている人は夢を絶対に諦めない。

強くなれ! やればできる! 必ずできる!

それでは、第六十二回卒業生百八十三名の諸君に輝きあれ。諸君の限りない前途を祝して校長から最後のメッセージとし、卒業式の式辞と致します。

以上。